女性化乳房の治療
女性化乳房とは男性のバストが女性のように膨らんだ状態のことです。
乳腺肥大の真性女性化乳房は乳腺と脂肪の除去、偽性女性化乳房は脂肪吸引で治療いたします。
症例画像
偽性女性化乳房の脂肪吸引による治療
乳房下に約4mmの小切開を行い、そこからまずTumescent液を入れ、対外式超音波を掛けた上で脂肪吸引の管を入れ、吸引しました。脂肪吸引は乳腺の上と下両方に行います。この方の場合は乳腺の下の脂肪の方が厚いようでした。
脂肪吸引後にドレーンを入れ、ガッチリ包帯圧迫を行い、翌日ガーゼ交換時にドレーンを抜き、皮下の貯留が特にないのを確認したら、その後はウエストベルトを使用して頂いていました。
手術の解説
1.乳腺の解剖
乳房(バスト)の膨らみは、乳腺だけでなく脂肪の量も大きく関係します。乳腺は乳管に繋がり、乳管は乳頭に向かい外界に開孔しています。
2.偽性女性化乳房の手術
乳房下縁から脂肪吸引用のカニューレを入れて脂肪を吸い出します。傷は術後1ヶ月くらいでは赤くて分りますが、3~6か月もすれば、ほとんど分らなくなります。
3.真性女性化乳房の手術
乳輪外周の下半分を切開し、乳腺と脂肪を直視下に切除します。この傷は長さがある分、よく見れば分かる程度に残ります。
4.偽性女性化乳房の手術の実際
偽性乳房下縁に極小の切開を加え、管として細めインフィルトレーターで薄い局所麻酔(Tumescent液)を散布します。その後、対外式超音波でTumescent液の拡散をさせ、Tumescent液内の血管収縮剤の働きで出血し難くなった状態になったら、細い吸引管で脂肪吸引を行います。
5.吸引された脂肪
上記症例では左右で350cc余りの脂肪が吸引できました。通常この後、ガッチリ圧迫包帯を行います。
料金
表示金額は税抜き価格となっております。
手術項目 | 金額 |
---|---|
乳房縮小術(リダクション) | ¥1,000,000~1,200,000 |
よくあるご質問
医学コラム
女性化乳房とは?
男性が、女性のような乳房の発育(乳房組織の隆起)を見る場合、これを女性化乳房(Gynecomastia)と呼びます。両側の方もいれば片側の場合もあり、また、その隆起もまちまちです。そして男性の乳腺や乳房は女性のように発育しないですが、ときに病的に乳輪直下にシコリや、痛みを感じることがあります。
そして医学的には女性化乳房の治療は乳癌治療と異なり生命に関わらないことからあまり熱心に行われていないのが現状です。男性の女性化乳房には、思春期の生理的な変化によるもの(思春期の男児の60%程度に一時的にみられるもので、心配のいらないもの)、男性の更年期に生じるもの、肝障害、副腎、甲状腺、泌尿器など等による内分泌や代謝異常によるもの、薬によるもの等があります(下記に列記)。
薬剤によるものはそのうちのおよそ20~30%程度であろうといわれています。また、分類として乳腺自体が発達した場合(真性女性化乳房)と、単に太って脂肪がついた結果胸が膨らんでしまった場合(偽性女性化乳房)があります。
これらの女性化乳房は軽度であることが多く、あまり心配いらないのですが、男性乳癌や他の内分泌系疾患との鑑別を行う必要があります。なお、薬剤が原因であれば、女性化乳房を誘発しない代わりの薬剤があるかどうかなどを判断する必要があります。早々に処方医にその旨伝える必要があります。たいていの場合、薬剤を中止すると1~3ヵ月で治るようです。
女性化乳房を引き起こすことが知られている薬
抗潰瘍薬(ドグマチール、H2ブロッカー = タガメット、ガスター)、ホルモン製剤(女性ホルモン剤)あるいはその拮抗薬(前立腺治療薬など)、強心薬(ジギタリス)、降圧利尿剤(スピノロラクトン = アルダクトンA)、降圧剤(レセルピン、メチルドパ、ニフェジピン = アダラート)、カルシウム拮抗剤、 抗真菌剤(グリセオフルビン)、向精神薬(デパス、ドグマチール)抗テンカン・抗けいれん薬(フェニトイン、カルバマゼピン)、抗ガン剤、抗結核薬(イソニアジド)抗アレルギー薬(オキサトミド)、胃腸運動賦活薬(ナウゼリン、プリンペラン)、気管支拡張剤、吸入薬
豊胸バッグ(シリコンジェルバッグ)
現在の豊胸バッグのルーツは1963年にシリコンジェルをバッグに密封した頃に始まります。それ以前は「肉質注射」と称してシリコンジェルや成分不明のオルガノーゲン等を注射で胸に入れていましたが、結果的に悲惨な患者さんを多く生み出しました。
その後の改良を得て、現在のシリコンバッグは第3世代などと呼ばれます。現在は粘性を持たせたコヒーシブが主流です。
男性ホルモンを投与しても女性化乳房になる?
男性ホルモン製剤・蛋白同化ステロイド(アナボリックステロイド)を使用したときに副作用として女性化乳房が生じることがあります。これは男性ホルモンであるテストステロンが女性ホルモンの代表であるエストラジオールに変換(アロマタイゼーション)することによります。
男性ホルモン製剤・蛋白同化ステロイドを投与するとその変換率が高まりこれらの薬剤からもエストラジオールに変換されるので男性ホルモン製剤・蛋白同化ステロイドを投与したのに女性化するのです。
これは乳房のみならず精神的にも女性化したりうつ的となり得ます。
女性化乳房の手術
薬剤性のものは原因薬剤の中止が原則ですが、疾病により薬剤を止められなかったり、原因不明で保存的に改善の余地がない場合、本人が望めば手術となります。
- 真性女性化乳房手術/乳腺脂肪切除法: 乳輪の下半分の外縁を切開して、ここから乳腺組織と脂肪を摘除します。硬膜外麻酔が順当でしょう。手術のはじめから終わりまで無痛でできるものです。
術後は切除した部分の組織を圧着するため、最初は専用の厚手の幅広の包帯、途中からバストバンド(胸部圧迫帯)を使用します。術後は、直接患部に衝撃がなければ普段の生活は当日より可能です。
術後翌日(検診にてドレーン抜去)、1週間後、抜糸と検診で通院が必要です。術後翌々日からシャワー可。1週間後からは入浴可です。バストバンドは術後約1ヵ月着用します。 - 偽性女性化乳房手術/脂肪吸引法: 女性化乳房の立ち上がりの部分から(通常乳房下縁)に約3~4mm切開、皮膚保護外套をつけた上で、細めの脂肪吸引用カニューレを入れて脂肪を吸引します。 麻酔および術後の事は真性女性化乳房手術の時と同じです。