問題2
佐藤喜宣伝教授の「大伏在静脈は下肢深部静脈」の誤った大前提での供述は被告医師側に想定外だったので、代理人弁護士は事前の反対尋問を続けることが出来ず、被告医師が続いて医学的な誤りに対しての矛盾を突く反対尋問をしようと挙手したが、裁判長は「一度発言の機会を与えたので二度目は与えない。」と却下し、直ぐ右陪席の裁判官の短い尋問に移り佐藤教授の尋問は終了したが、予定終了時刻まで1時間余り前に終わらせており、これは被告医師への判定尋問権を阻止した違法な訴訟指揮であった。
また「~二度目は与えない。」との自らの発言を調書から勝手に省いて印刷させるなど、裁判の公正さを全く欠くものでもあった。
更に捻挫自体は翌日の急死に繋がるものではないし、捻挫とは別に翌日の急死に繋がる深部静脈血栓があったとしても、エコノミークラス症候群同様に、診断機器も無い中では医師が診断をつけることは殆ど不可能であった。
このような被告医師側の数々の主張や立証の証拠も殆ど読んでいないが如く、証人佐藤教授の調書と大学病院医師の鑑定書に頼った判決文となっていた。
太腿内外の脂肪吸引の12日前に、A医師は下腹部の脂肪吸引を鼠経部アプローチにて吸引管を刺入しているので、本事件の剖検で深部静脈である腸骨静脈に一部器質化した血栓を多量に見つけた点から、距離的に近い鼠経部アプローチによる可能性を被告医師は主張した。
鼠経部では深部静脈は股関節の前を超えて通って来るので比較的浅く、A医師の技量が拙劣なら脂肪吸引操作のつもりが何度か右外腸骨静脈を突く操作を行った可能性は考えられるが、剖検では調べておらず、この推論は無視された。
(大伏在静脈内の微小血栓は太腿中央部の孤立性血栓であり、剖検で腸骨静脈より末梢の深部静脈である大腿静脈に「特記することはない。」との剖検での回答から考えると、右腸骨静脈に一部器質化した血栓を多量に見つかったことはA医師の手術で独立して起きたとも考えられる。A医師は実は内科医で、卒後は大学院の4年間を除けば臨床経験3年半であり、内科医がどれだけ脂肪吸引のトレーニングを受けたかは不明である。それもB医師は主張したが、被告を外れたA医師の責任は一切判決文で取り上げられることは無かった。
キーワード: 大伏在静脈, 肺塞栓