医療ニュースと雑感2009

~~医療ニュースと雑感(09年度)~~

「高度医療が障害者を生き残らせている」(鹿児島県の阿久根市長)(2009年12月23日) 阿久根市の竹原信一市長は自らのブログの中で 「高度医療のおかげで以前は自然に淘汰された機能障害を持ったのを生き残らせている。結果養護施設に行く子供が増えてしまった」と11月に書いた。そして抗議に来た障害者団体のメンバーと面会し謝罪は拒否したがブログの修正を約束し、現在ブログには「ただいま修正中」と書かれている。~とありました。 市長という立場で凄いこと書くなあ。と私は驚いたものです。しかし嘗てスウェーデンでは「断種法」を福祉国家の確立のため左翼政権が制定し、精神病患者、知的障害者に不妊手術合法化し断種を強制していたことが10年余り前に大々的にニュースで取り上げられておいた記憶が私にはあります。他の北欧諸国や米国、それを真似た大戦時のドイツでも優生学の名のもと断種の強制が行われようです。

「研修医の給料はもっと上げるべき」(2009年12月19日) m3.comにこんな記事が載っていました~「給料が安すぎる。手取りで20万円しかもらえないのはおかしい。レジデントの勤務時間は9時から15時までと、あり得ない設定になっているが、実際には皆、8時から20時まで働いている。それなのに時間外労働手当は月8回まで、しかも時間にかかわらず、1回5000円というのはひどすぎる。毎日、皆、明らかに時間外労働をしており、土日も毎日働いているのに無給というのはおかしい」~確かにおかしいです。しかし20万円というのは関東だったら確か聖マリアンナ医大がそのくらいだと数年前聞きましたが、もらっているところは税込30万円くらいはもらっています。ただ、大学病院ですと研修医が終わって卒後3年目以降になっても無給医局員という立場の人が少なからずいます。これは勤めているのに病院に名前が登録されてないのです。こういうオカシナ事は10年以上前は医師は声高に言わなかったし、医師不足という言葉も聞かれませんでした。良い悪いは別として医師の意識が変わってきたのだと思います。

「見た目の年齢、寿命の指標」(2009年12月17日) 私が前から思っている事が記事にありました。 「70歳以上の双生児1826名を追跡調査、外見的な年齢と寿命および加齢の表現型との関係を検討した結果、双生児のうち老けて見える方が先に死亡することが多く、年齢差が大きく見えるほど、この傾向は顕著であった。外見的な年齢は機能的、また分子生物学的な加齢の表現型とも相関していた。」 そして私は、ここまで書くと言い過ぎとの指摘があるかも知れませんが、若い意識を持った方が外見の若々しさを保て、寿命だって伸びると思っています。よく癌患者も前向きに明るい意識を持った方が寿命が長いと言われるように、意識の持ちようでで免疫力やホルモン分泌が少し変わってくるようです。またそれで逆手を取って、皺取り手術で外見から中身(意識)を変える事もアリだと思っています。

川崎協同病院事件の医師の有罪に異議あり(2009年12月9日) 須田セツ子医師 最高裁の決定で担当の須田医師は殺人罪で懲役1年6月、執行猶予3年が確定しました。この川崎協同病院事件とは呼吸器内科部長で主治医の須田医師が98年気管支ぜんそくの重い発作でいったん心肺停止状態になり、その後も意識が戻らなかった患者さんに対し、気道確保のための気管内チューブを抜き患者がのけぞり苦しそうな呼吸を始めたため、准看護師に筋弛緩剤の投与を命じ、患者は間もなく死亡させたものです。 最高裁の決定と言えど私は尊厳死の立場でこの須田医師の行為を支持したいです。須田医師の行為は医師本人にとって何ら利益になるものでなく患者や患者家族の状況を慮ってのものでもあるからです。日本では尊厳死の議論が米国と比べ全然進んでいないので、最高裁と言えど、このような事なかれ主義の決定をしたと思います。

「開業医と勤務医の収入格差の是正を」、事業仕分け(2009年11月11日) 事業仕分けは乱暴な感じも受けていますが、開業医と勤務医の件も慎重に検討して欲しいです。年齢や経験が違う、設備投資の借金・退職金・企業年金の有無、経営まで見ているか否か等、収入が同じになったらおかしいです。ただ私の学友だった外科医も医師3年目で過労死したなど私も勤務医の過酷な勤務状況は考えてもらいたいと思っています。

鳩山由紀夫首相:「(たばこ税は)環境や体の面から見て、増税ありうべしかなと思う。」(2009年10月31日) 鳩山由紀夫 良いと思います。当院に来る患者さんも「肌に悪いし老化促進だし止めたい。」などと言われるのですが、踏ん切りが付かないのです。1箱500円、できれば1000円まで上げられませんかね。民主党は世界的に見れば「中道左派」だから、こういう事には期待します。

開業医の年収2252万円、勤務医の1.7倍 厚労省 配分見直しへ(2009年10月31日) この記事を読んだ人は、うわー医者って良いな。勤務医でも1400万円超える計算だ。って思った人は多いと思います。でも医師の半分以上、特に勤務医は意外に給料に無頓着と思います。年休も取らない、残業手当や休日出勤も貰わない、要求しない。って姿勢の人は私が大学病院・その関連病院、徳洲会病院に勤めていた時は、皆そんな感じでした。でも病院ってやはり医師を中心に回ってますから、自然に給料が上がります。私も茅ヶ崎徳州会総合病院では気が付けば年収900万円を超えていたと言う感じでした。

本日参議院補欠選挙当選の土田博和氏は昔から医系雑誌で目立つ人でした。(2009年10月25日) 私は平成5年までにはこの土田博和氏の名を覚えたものです。昔からジャミックジャーナル等の雑誌で度々インタビューなど受けてはよく記事が載っていまし、研修先の虎ノ門病院の名を拝借して自分の病院を御殿場に造った際に、「フジ虎ノ門病院」と名付けたのには、徳州会病院での私の部下だった根本先生(北里大形成から出向)に「先生もいつか開業した時、根本徳州会病院って名付けたらどう!」と言って皆で笑ったものでした。 土田氏の言ってたことは的を得たことが多かった気がします。医師は臨床が多忙で社会に訴える暇もないし、そういうことが不得手な人も多いですから、土田氏のような人が医療を行政から改善して行くのに期待します。医療は歪んだ構造が放置され破綻してやっと行政が動くような後手後手に回って来た面がありますから。

民主党の医療政策も財源不足で期待はずれ(2009年10月21日)民主党・国民新党・社民党は野党の時に参院で「後期高齢者医療制度の廃止等・・・法律案」として提出されたものに賛成し「廃止」を可決させました。しかし政権を獲ったら理由はあるでしょうが「当面継続」となっています。また、地域医療再生基金など一旦決まった補正予算も執行停止されて、それを念頭に病院再建計画を進めていた医療関係者を驚愕させています。更に「診療報酬改定」「高齢者医療制度の保険料の上昇を抑制する措置等」「新型インフルエンザへの万全の対応」「がん対策の拡充」など11項目の『事項要求』は藤井裕久財務相によれば「予算獲得の対象になるのは非常に薄い」とのことです。・・・8月30日の衆院選では医師の約49%が民主党に投票したとのデータがあります。バラマキと言われた公約には各職種に恩恵を感じるものが多く、医療関係者も同様でしたが、案の定、財源不足です。

医療・介護の倒産最多(競争激化や資金繰り悪化):本年上期 (2009年10月14日)  共同通信社のニュースでは、2009年度上期(4~9月)に倒産した医療機関と介護事業者の数が半期としては過去最高に達した(帝国データバンク)。前年度上期の1・4倍。競争激化や診療、介護報酬の引き下げなどで経営・資金繰りが悪化、景気に左右されにくい業種とみられていたが、金融機関の不良債権処理が公的な業種にも及んできた傾向が見られる」と分析。~とあります。 14日に政府は中医協の権限大幅縮小が決めましたから、来年の診療報酬改定で民間病院の経営は益々厳しくなるでしょう。鳩山政権は経済政策、雇用に対する基本的考え方がないですから、今後『鳩山不況』が続き、当面は労働者の賃金カットや解雇は改善しないと思います。社民党が言うような最低賃金を1000円に引き上げる等の法令にして労働者を守るという発想は社会主義的で後ろ向き、結局は経済のパイを大きくする、GDP(国内総生産)を上げなければ国民の生活が豊かにならないでしょう。

日本美容外科学会(2009年9月25・26日)  美容外科学会(JSAPS)がありました。私は性別適合手術(SRS)を発表しましたが、後で先生方から割と高い評価のお褒めの言葉頂きました。褒めて下さったのか分りませんが、この件で大森喜太郎先生から声をかけて頂いたのは意外でした。一番褒めて下さったのは札幌美容形成外科の本間先生です。ブログにも書いて下さったというので、後で読みましたが有り難いことと思っています。本間先生とは初対面でしたが、実は私はこの先生を知っていました。HPも何度か開いています。キチンとトレーニングを受けた真面目な先生です。本間先生の様な方からの知遇を得られるなら学会発表に励みが出るものです。

民主党の医学部定員1.5倍増し(2009年9月18日)選挙前からこんな事を言ってましたが、医師が使い物になるのは卒後数年のトレーニングを積んでからで、例え来年1.5倍増しを実行しても戦力になるのは10年後以降ですから即効性がありません。また医学部生を教育するのに莫大な金が掛かります。人体解剖の御献体を集めるのも現状でも大変なのに金やそういう根回しはどうするのでしょうか?また急激な医学生や研修医の増加は、患者さんを診療する側の医師を教育側に回さねばならないのも問題です。鳩山民主には期待もある反面、人気取りのマニフェストを八ッ場ダムの中止の如くブレのないところを見せるためゴリ押しするのに戦々恐々です。高速道路無料も含めマニフェストを修正してもキチンと説明すれば国民は非難しないものと思います。

似た名前の薬で死亡事故 (2009年8月20日 )  徳島県の健康保険鳴門病院で昨年、入院していた男性患者が、抗炎症剤(サクシゾン)と名称が類似している筋弛緩(サクシン)剤を誤って点滴されて死亡した医療事故で、薬の投与を看護師らに指示した女性医師(37)を業務上過失致死容疑で書類送検した。・・・とありましたが私はこの薬、サクシンを20年位前に麻酔の導入で使っていましたが、この時はサクシゾンとの誤認事故など考えたこともなかったです。事故が起きてからの名称変更したそうです。

外科医ピンチ 過酷勤務、伸びぬ報酬・・・若手離れ深刻  産経は昔から医療の中身の検討不十分なままに医療機関を糾弾する報道ばかりしてきましたから、外科医不足の遠因に一役かったと反省して欲しいです(以下記事)。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (産経新聞) 産科、小児科の医師不足が叫ばれて久しいが、ここ数年、外科医の減少が目立っている。長時間に及ぶ手術や当直など勤務状況が過酷であるにもかかわらず、報酬はそれに見合わないことなどを嫌い若い医師の外科離れが進んでいる。こうした状況を懸念した医療関係者は、NPO法人「日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会」を発足させた。情報発信や待遇の改善を国に訴えていくという。

医師不足と女性医師の増加 : (09年08月15日) 女性医師 昨今の医師不足が発現した要因の一つに女性医師の増加が挙げられます。今まで男性医師の場合エネルギーのほとんどを医業に費やすような働きを卒後数年間以上強いられてきた面が、外科・産科・救急・整形外科などで見受けられましたが、過労死した例も散見され、労働基準法などどこ吹く風という感じでした。医学部は戦後何十年経っても封建的で上下関係も厳しく、入局年度が1年でも違えば扱いが全然違う戦前の陸軍のようなところが多かったのです(カルテも長らくドイツ語の単語を散りばめて書いていました)。しかし近年女性医師が急速に増加してきて様相が大きく変わってきました。 今、女性医師が労働者として人間として当然であるという働き方を発言し、時短勤務、退職→パート勤務等としている時、男性医師の意識にも変化が生じているようです。また以前国立医学部を卒業した女性が直ぐ結婚して3人の子持ちの専業主婦をやっているのを、本人の文章として読みました。医師を育てるのに莫大な税金が使われてるのに辞めたままで良いのか?という思いもありますが、さりとて、その人の生き方を束縛出来ないものです。 (m3.comの記事の抜粋:「医学部入学者に占める女性の割合を制限すべき? 」)