キチガイの様に手術を経験する②
大学医局でも徳洲会でも若い先生が執刀する場合はそれ以前に同じ手術の助手を何度も務め、「前立ち」と称して第一助手をしベテラン医長か部長の執刀の手の動きに合わせてスムーズな介助が出来れば合格、次回は医長か部長が「前立ち」をして若い先生が執刀医となるものです。この場合、執刀医にとっては初めての手術でも医長、部長とほぼ同じ手術が行えます。万一手術の手が止まっても医長、部長が「こうだ」と言いつつ間違いない手術が行えています。
私は徳洲会・湘南鎌倉総合病院の塩野部長(現:院長)からは、その「前立ち」を通して整形外科医として多くの事を学びましたので、今も病院のHPで塩野先生のお顔を拝見すると敬服する思いです。
私が茅ヶ崎徳洲会総合病院に移ってからはレジデントの先生や北里大学形成外科から3ヶ月または6ヶ月コースの整形外科研修に来ていた先生には同じく「前立ち」を通して、彼らが3ヶ月終了時には「大腿骨頸部骨折のCHS」、6ヶ月終了時には「大腿骨人工骨頭置換手術」の執刀医をさせてあげていました。今、形成外科学会でその時の先生に会えば随分偉くなっていますが、話してみると妙に愛想が良いものです。
さて、美容外科の場合、その「前立ち」を通しての学習が殆どありません。手術は執刀医単独か、執刀医と助手の看護師で行われる事が殆どで、若い先生は合間合間で何度か横で見学し、後日いきなり本番手術となる事が多いです。ただ美容外科医師の半分位は何科であろうと外科医として辣腕を奮って来た上での美容外科クリニック就職なので経験は生きます。(続く)