広い肩幅を狭く(鎖骨骨切りで短縮)
広い肩幅を狭くする手術を私は平成17年に学会発表しました。当時、高須克弥先生から『日本で初めての発表で大きな意義がある』とのことでお褒めのお言葉も頂き、とても嬉しかったです。
鎖骨を短縮させて実現させるのですが、この時の発表の概略は過去のブログで連載しています。
私は鎖骨骨折の手術自体は湘南鎌倉総合病院の整形外科在職中に数多く行っており、この頃に整復位でなく美容外科的に鎖骨を短縮して広い肩幅を華奢にする形での骨接合術を将来やりたいと思ったのでした。
同病院の整形外科部長が考案されたハーバートスクリューを使った術式は傷が4か所にはなるけれど、一般的なプレート固定術と違い、全部皮膚のキメに沿っての切開で出来る事、4か所全部の傷の長さを合わせてもプレート固定より傷が短い美容的利点もあり、これは私を整形外科医長に任命して頂いた茅ヶ崎徳洲会総合病院でも積極的に行い、この術式に自信を持っていました。
そして後年、性同一性障害特例法が平成15年7月に成立し、ここで期は到来したと自覚し、広い肩幅を狭くする手術を行うことを表明、来てくれた主に性同一性障害の男→女の人(以下Male to Female=[MTF]と称します)にどんどん手術を行いました。多くのMTFは総じて言えば「やって良かったです。」と言ってくれ、中には「9号の服が切れるようになって嬉しい。」と言ってくれた人もいます。
しかしやはり問題は「傷」でした。プレートの術式よりマシとしても、ハーバートスクリューを使ったところで、元々シワも全くない所に切り込みますから術後何年経っても、醜くはなくても至近距離でみたら左右対称の傷から、普通の人も見て「何かやったのかしら?」気付くのです。特に肩の部分は切開は大きくはなくても部位的に瘢痕の見た目の落ち着きが悪い場所なので、私としても残念に思うものでした。
それで手術希望者が女性(純女)の場合には特に傷のことを強調し「肩幅が広めでも本当の女性が男性と間違われることはないです。」と説明、原則お断りを何年も続けました。つまり総合的にはプラスとは言えるMTFへの専用手術としていたのです。
ところが最近のMTFは10代からインタ―ネットで女性ホルモンを入手しており、20代で当院に来た際は結構な美人になっている人が多く、「来年タイでSRS(性別適合手術)を受ける予定ですし、いずれは女性として結婚もしたいですから、デコルテの部分に傷があるというのは気になります。」等と言われるので、私も考え直さざる得ませんでした。
深慮の上での結論は殆ど皮膚切開を行わずに結果を出すということ。具体的には9mm以下の極小切開に創縁保護のプロテクターを装着し、そこから巧みな骨切りをして、金属固定を使わずに外固定だけで肩幅狭小を保ち、それで骨癒合させてしまうというものです。
この頁に揚げたモニターさんもその術式で受けた1人です(画像クリックで拡大)。左が終ったので近々右を行う予定です。(続く)