鎖骨は髄腔があるから髄内釘を通す
鎖骨骨折の手術は骨の外側からスクリュー(螺子)を用い金属のプレートで留める方法と、鎖骨は「ちくわ」みたいなもので中に穴が通っていて柔らかい海綿骨が詰まってますから、ここには、まあ何とかに釘が通せます。まあ何とかと書くのは、鎖骨が軽くS字状になって真っすぐではないからです。
私はプレートで留めるより髄内釘を使う方を好んでいましたが、それは骨折部の骨膜を剥ぐことなく手術が出来るからです。鎖骨骨折は手術せずともに鎖骨バンドで固定しているうちに高齢者でもない限り骨癒合を得るものですが、プレートを用いる際、むやみに骨膜を剥がし過ぎると骨癒合が遷延したり、癒合せずに偽関節を呈したりする事があります。また髄内釘の方が傷が小さくて済む事も私を髄内釘を好んだ要因です。
写真は内側から釘を刺していますが、私は外側端からキルシュナー鋼線と呼ばれる釘を打っていました。ただし写真の様に1本では本当は心もとないのです。というのは鎖骨は上肢が水平以上に挙げると軸方向に回転(これを回旋と言います)してしまうので骨折部の安静固定が得難いのです。そのため写真のような固定では保存療法(非手術的治療)に準じて三角布で前腕を頸から吊り下げる様な安静をしばらく取らざるを得ません。
それで私はキルシュナー鋼線を複数、髄内にギチギチに叩きこむやり方で回旋転位を防ぐようにしていましたが、湘南鎌倉総合病院整形外科勤務時代に、整形外科部長が、「もっと良い髄内釘がある。」と言って革新的な方法を我々に指導されたのでした(続く)。