I型プロテーゼ+耳介軟骨または鼻中隔延長

(昨日の記事と一部重なりますがご容赦下さい)
私が美容外科診療(つまり手術も担当)を開始したのは昭和63年からですが、その前や学生の時の美容クリニックでの見学も含め、平成半ば過ぎまで、型シリコンが使われる場面は殆ど見たことがありません。

私自身は中間型を一番多く使ってきたのですが、鼻先が低くもない人にシリコンを鼻先から鼻柱(医学的には「鼻橋部」と言います)の途中まで入れていたのは、鼻先を少しは尖らす意味もありましたが、安定性(ずれ防止)のためでした。
つまり、短いシリコン、端的には「鷲鼻なので目と目の間にだけプロテーゼを入れて下さい。」という希望の人が来ても私が知る限り医師は皆が断っていましたように、鼻プロテーゼは、短ければ短いほどシリコンが回転すると言いますか正中に対して斜めに角度がついてしまいがちなのです。

ですから、隆鼻術希望の患者さんが鼻先だけは高めの場合、安易に作れる型プロテーゼでなく、わざわざ中間型プロテーゼの鼻先部を1mm以下のペラペラに加工して、短い脚の部分は鼻柱に入れて出来るだけ真っすぐな鼻を作っていました。これは型で済ましてしまうより優れていると特に当時は思っていました。

また先生方各々に工夫があり、安見正志先生の場合、中間型の短い脚が正面から見れば細いのに横から見ればやや幅があるように加工し、これを鼻翼軟骨内側脚の間に入れ込んで完璧に正中に入れていました。古川正重先生(中野坂上の古川晴海先生のご尊父)は鼻孔内側切開をわざわざ両側に行い真っすぐに入れられていました。昔は職人気質の先生が多かった印象です。

しかし私の見る限り平成20年のリーマンショック頃を境に、型プロテーゼ+耳介軟骨移植、または型プロテーゼ+鼻中隔延長が良いというインターネット上の宣伝が盛んになって、徐々に浸透して行ったように見えます。背景には美容クリニックが増えすぎて競争激化し、一人の患者さんに支払ってもらう金額を上げる工夫に使われているように見えます。一般の民間病院で患者さんに「危ない、危ない。」と言っては検査漬け・薬漬けにするところと似ています。尤も医療的に嘘とまでは言えません。

私は昨日、添付の画像を持参された患者さんへ鼻中隔延長単独の手術をしました。プロテーゼの併用もないのに75万円+消費税を頂いています(静脈麻酔代込み)。この手術は医療側からすれば売上の貢献度の大きい手術です。
鼻中隔延長では併用する場合のプロテーゼは短めの型しか使えませんから、私も挿入の際はプロテーゼの位置が曲がらぬように非常に気をつけています。

昨日の患者さんの希望はかなり大きな変化のためにハイブリッドプロテーゼでは追い付きませんので鼻中隔延長となった訳ですが、手術終了時に殆ど同じ形に仕上げることが出来て、私の気持ちとしても芸術作品を完成できた喜びが沸き上がったものです。
もっとも今後のリスクとして、①鼻が曲がってくるかも?②鼻先は移植軟骨だけで高くしているので、軟骨吸収での変化は?と、この手術はハイリターンですがハイリスクでもあります。