手術が思った以上に楽しくて、外科医の道を選びました(読売新聞/高梨ゆき子氏)

表題の文章は、「現代ビジネス(画像クリックで拡大)」に寄稿した読売新聞:高梨ゆき子論説委員が実際に某医師から聞いた言葉として2頁目に掲載されていました(原文のまま)。

この発言は高梨氏の捏造と思います。私は長いく臨床医を続けてきて一度も聞いたことが無い言葉です。
研修医から医師として働きはじめても、専攻診療科を決める前のローテーションで回って来る医師に、指導する先生方は手術の執刀なんてさせません。させたら人体実験じゃありませんか。後年に専攻診療科を決め入局しても第3助手あたりから入り、下働きの雑用が大半の中で、少しづつ見て習って行く日々が続きます。 だから、どこから「手術が思った以上に楽しくて、外科医の道を選びました」なんて言葉が出るんですかね?
 法曹三者で例えても、某裁判官から聞いた言葉として「人を裁くのが思った以上に楽しくて、裁判官の道を選びました。」こんなのも有り得ないです。
マスコミは勝手に一般人の反感を覚える言葉を作って反響を高めているだけと鑑みます。

命に直接かかわる肝胆膵などの外科医は日々苦行の連続です。長時間労働と責任の重さが半端ない。 手術には常に不確定要素があり、開けてみて手術中に手が止まる(汗、術後経過が各人で違い気が抜けない。 これを傍から「手術が楽しくて・・・」ですか?とか尋ねられたら、外科医は皆、怒りますよ。

若手外科医の入門となる虫垂炎とか鼠径ヘルニアの手術も、死亡リスクがあります。 若手医師は前立のベテラン医師の前で、睨まれ緊張しながら行っていて、「楽しい」という感覚はないです。 人の体にメスを入れ、その後の人生に関わっていきますからね。 だから医師で自らの手術が終わった時に「楽しかった。」などと言った人はいないのです。 手術は遊びではないですから。

それは美容外科医でも同じで、手術が終わった時に「いや~しんどかった」「う~ん、大丈夫と思うが・・・」こんな言葉を勤務医の時によく聞いたものです。これを「美容」だから基本19診療領域(外科、産婦人科、整形外科など)とは違って「手術中、楽しいんじゃないですか?」と聞かれれば「いえ、目や鼻は1mmの違いも許されませんし・・・」と余裕なんてなく、皮膚切開が始まってからは皆、手術時の必要な発言以外はしないですね(私の知る限り)。