イリザロフ法と脚延長
イリザロフ先生に骨はイリザロフ法で何センチまで伸びますかと尋ねたら「何センチでも伸びる。」と答えたという話があるのですが、これは事実です。ですが通常は軟部組織が延長に付いて行けなくなるので、若い人で大腿5cm、下腿5cmくらいかな。などと言います。これがAchondroplasia(骨軟骨形成不全)という病気の人ですと骨だけが問題で軟部が余っていますから、私が久留米大学整形外科在籍時の症例でも16cmも脚を伸ばした患者さんがいます。
先日の研究会でも夜間の討論会で若い女性の症例(片側脚短縮)に「できれば23㎝伸ばしたいです。今、大腿骨だけで12cm伸ばしました。」との報告と質疑応答があり、無茶するなよ的な発言をさせた先生は、「そのうち股関節脱臼を起こしますよ。筋肉も全部切って膝もデーゼ(固定)して棒脚で伸ばすしか目的は達っせんでしょう。棒脚だ、棒脚。」とも言われたのですが、共同演者が「いや、この女性の軟部はかなり軟らかいので、できるだけやってみます。また来年経過報告します。」などと言われました。
美容外科クリニックでは以前は大阪のメガクリニックが脚延長をされていまして、実際に下腿5cm、大腿3cm伸ばされた方が、当院に別件で来られたことがあり、詳しく脚延長の経過を聞くことも出来ました。まず下腿5cmを何の問題もなく伸ばせ、半年後には走れるようになり、1年半して大腿を延長開始したのですが、膝関節拘縮が生じ膝が十分曲がらなくなってきたので、3cmの延長で中止されたとのことでした。下肢の筋肉は2関節またいで付いているものが多いので、先にやった下腿延長で、後の大腿延長の際、軟部の延長に制限が出たというところです。
ですが高柳先生も学会で言われていましたが、「下腿を伸ばした方がカッコイイ」ものです。
この脚延長が美容手術として普及できるかは創外固定器の装着期間をできるだけ短く出来るかに掛っており、先日の研究会で招待講演されたポルトガルのロペス先生(ロペス元大統領の息子)も伸ばしたら髄内釘に横ネジを刺し創外固定器を外すと言われており、昨年出席されていたスカイ整形外科の柏木先生も「それもやるにはやります。」と言われていました。そして私、木村も平成6年当時からそれを言っているのですが、昨年柏木先生から横ネジが全荷重に耐え切れず折れるので、むしろ創外固定器の装着のまま骨の成熟を待つ方を勧めていますと言われ、『確かにそうだな。』とは思いました。私も大腿、下腿の骨折での髄内釘+横ネジで患者さんが免荷を守らず横ネジが折れて、この抜去に苦労した経験があります。
この骨延長が美容目的で発展できるか否かは髄内釘の更なる高度化(最初から最後まで創外固定を使わないアルビジアネイルも含め:頁下段)を待つところです。