美容外科学会 フェイスリフトは剥がしてズラして留めるもの

この2日間、日本美容外科学会がありました。時々「これは!」と聞いて勉強になる話も聴けるには聴けます。
美容外科学会
さてフェイスリフトの演題を聴講していて、司会の先生が、当たり前のこととして「フェイスリフトは剥がしてズラして留めるもの」と言ったのですが、「~して」「~して」「もの」と結んだ口調が良いなと思いました。
私たちはリフトが長期間持続性を保つには、皮膚側と筋肉側を剥がして皮膚側を斜め上方に牽引して皮膚と筋肉の位置関係を変えて切開部で重なった余剰皮膚を切り取って傷を縫合のように患者さんに説明しますし、HPにもSMSAや併用の脂肪吸引も含め、そのように書いているのですが、患者さんにはどれ位理解がされているのか分かりません。

患者さんからすれば『傷も短めで腫れも少なく効果が十分あって何年も保つ』のが理想でしょうから、患者さんとのカウンセリングなどで「ミニリフトで『効果が十分あって何年も保つ』ができませんか?」とか「良いとこ取りができませんか?」などと言われることもあります。しかし基本的な考え方として剥離範囲が広ければ広いほど、そして牽引して皮膚と筋肉の位置関係が変われば変わるほど『効果が十分あって何年も保つ』に繋がるものです。だからミニリフト単独では傷も小さく腫れも少ないけど『人にバレない程度の小さな変化しかなく何年も保てない』というのが現実です。

上記のことを患者さんに分かり易く説明するには「フェイスリフトは剥がしてズラして留めるもの」だから「剥がしもズラしも足りないミニリフトは効果も足りないもの」と言いましょうかね。

とにかく患者さんに理解してもらい、その理解を長く記憶に留めてもらうには、シンプルだけど的を射た説明を心掛けたいです。
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話は変わりますが、美容外科学会で壇上に上がった基幹病院に勤めている医師が「今の研修医の1割はいずれ美容医療に進むことを考えています。」と言ったのを聞いて私は衝撃を受けました。

これには私は2つの要因を考えています。
①私たちの世代では美容とか芸術とかに高い関心があって美容医療に進みたいと思っていた医学生や若い医師も『医師とも在ろう者は内科や外科、そうでなくても一般病院に診療科があるような真っ当な診療科に進むべき。』と先輩医師も自分自身も倫理観としてそのように思うことがあって、なかなか決心できなかった。それが若い世代だと意識が変わった。
②大学病院では無給医局員としてずっとタダ働き、基幹病院に勤めては時間外手当てがなくとも毎日23時過ぎまで働き、深夜に帰宅後も電話が鳴れば深夜~明け方にも即対応・即出勤、土日も手当ては出ないが回診に行くのが責務であり、患者の容態が悪ければ当直でもないのに病院泊まりか自宅にて臨戦態勢、これを一年中続けて当たり前にしなければならない。この旧世代の先輩医師たちの働きぶりは『おかしかったんじゃないのか。私たちは労働基準法違反の奴隷にはなりたくない。』そう思って、働いた分は給料をくれる美容医療に進みたいという研修医が増えてしまった。

患者さん視点で言えば、本当に美容医療に命を賭けたいという医師が入って来るのは喜ばしいでしょうが、『楽で良い給料をもらえそうだから美容でも行くか』との気持ちで入って来るのは嫌ですね。私も嫌ですが、ただ私も顧みれば、無給医局員とか時間外手当も出ないのに重責の仕事を多大に行うとは今は宜しくないと思うようになりました。そこから医療者の過重労働で、安くて世界第一級のレベルが維持されている医療制度は変えるべきと思うことをYahoo!コメントに投稿しました。すると多くの賛同を得ています。