日本美容外科学会をひとつに(波利井清紀先生)
(合併に関して)実は私はサジを投げた人間でして、昭和から平成元年にかけて何とか1つにしようとしても形成外科の内側から反旗を翻されまして、馬鹿馬鹿しいから、こんな事を止めたよ。と言った人間が、ここに立って新たに2つの学会が1つになるのを討議するのは、いささか忸怩たる思いがあります。
私自身は東大医学部、国立大学に初めて形成外科に美容外科を設立した人間です。
この目的は戦後にいわゆる美容整形という言葉でマスコミ等の視点に立って、要は美容外科を一般的に認知をして貰いたい。という気持ちが一つ。
それから功利的で申し訳ないですが、形成外科というのは一体何をする学問かよく分からない。そういうものに若い人に来て頂く時に、何か目標が無いと行けない。皆がマイクロサージェリーでもなく、皆が癌の再建でも生きらない訳です。その時にやはり美容外科というのは1つの非常に大きな柱になる。この事を大学人としてというか大変失礼な言い方ですけれども、大学の医局というものは、こういうものが必要なんで公にしたい。
それから何とか(美容外科学会が)1つに出来ないかという夢を持ちました。残念ながらこれは目的を達成出来ませんでした。その理由、ここからは私の私見ですからバイアスが掛っていると思っていると思って下さい。
あまりにも美容整形というのは戦後何回となく出て来ておりますが、十仁の梅澤文雄先生がお作りになった、その時に東大の連中も多くが関わっておりまして、昭和23年位から財団法人の美容外科研究所というのが梅澤先生の元にありました。そこは美容整形、美容整形という言葉を使っておりまして、ずっとこれで来た訳です。マスコミもずっとそれに馴らされて来て、私は東大で美容外科を作った時に、随分多くのマスコミが訪ねて来ましたが、その時、私はマスコミに「美容整形」という言葉を使うなら一切応じない。と言ったんですけど、それにも関らず、いまだ持ってテレビでは美容整形という言葉が蔓延っております。これが非常に残念である。
美容外科はクリニックを主体として当然発達しておりますから、大学人の参入は内心結構腹が立っていると思います。これは明らかに言われた事があります。先生たちは肩書で美容外科出来ないのに何でやるの? 申し訳ないですけど私自身は大森清一先生の元で先生たちより遥かに昔から美容外科をやって来ました。 にも関らず大学には美容外科の患者さんは、そう多くはないのが現実です。今現在、殆どの大学は国立大学もそうですけど、形成外科なか持ち美容外科がありますが、美容外科の患者さんはそんなに多くない筈です。殆どは保険診療で成り立っております。
という観点からすると開業医の先生方は、こんなものは手術手技ですから数多くやれば重瞼でもそうですけど、数やった人の方が上手い訳です。論理じゃない訳です。そういうとこがありますから開業医から大学人が馬鹿にされても仕方がない。
私が(学会を)2つを一つにする時に一所懸命、形成外科の教授連中に説いたんですけど、その時にある大学の教授が、そんな事先生言ったって、大学の形成外科をやっていれば美容外科なんて簡単に出来るわよ。って言いました。で、その人に向かって、じゃ、あんた本当に出来るの?って話をしたんですけど、それほど、形成外科は美容外科の基本手技である事は間違いないけれど、ある一点から違ったものになる。患者さんの扱い方、あらゆるもの、インフォームドコンセント、全て若干違うものがあります。それは保険診療と自費診療の違いでもある訳です。(続く)