脂肪吸引術後に脂肪塞栓症候群による~1例?

 昨日の救急医学会で「脂肪吸引術後に脂肪塞栓症候群による~1例」との発表がありました。演者の発表では患者さんは術直後から容体が悪くなり、気管内挿管して搬送されたそうです。その時に頻脈、レントゲン的に全肺野の透過性の低下(しかしこの疾患の特徴であるSNOW STORM陰影の発言はなく、私も違うと思いました)、挿管時酸素投与にてもSaO2が91の低酸素血症、MRIで小脳の2ヶ所の高信号から急性脳梗塞、造影CTで正中付近に肺浸潤 末梢の肺動脈に陰影欠損、皮膚に点状出血斑を認めた(この画像は映写無し)。以上から脂肪塞栓症候群と認めたとありました。私は術直後から重症であったことなどからも誤診ではないかが気になりましたものの、最低限の事は尋ねたいと思い挙手し質問、意見もしました。
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木村:患者さんは身長・体重は幾らでしたか?
演者:身長150cm、体重90キロでした。
木村:(90キロ!! 150㎝でこれでは手術適応と言えるか!)
   吸引した脂肪の量は幾らでしたか?
演者:知りません。
木村:(大事な事を聞いていないじゃないか!)
   脂肪吸引したクリニックはマトモなクリニックだったんでしょうか?
演者:有名なクリニックです。
木村:いわゆる大手でしょうか?
演者:そうです。
木村:大手の場合、脂肪吸引は(顔をいじれない)ド新人が担当するケースが多く、標準的な術式でやったのではないケースは考えられると思います。また本来、脂肪吸引後に吸引した部分をローラーなどで圧迫しても、吸引管の差し込み口からの排液に、見た目の油滴は見ないものです。
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フロアーから挙手した医師:僕らが脂肪塞栓症候群だろうか?と後から考えるのは長管骨骨折後なのですが、本件は、どのようにして脂肪滴が血管内に入って行くものでしょうか?
演者:傷ついた血管から入って行くものと思われます。
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(・・・そんな訳ないでしょう。血管は損傷したら出血するのであって、出血しつつ脂肪滴を吸収するなんて有りない。だからこの四半世紀の美容外科学会でただの1例も脂肪吸引後の脂肪塞栓の報告はない。大腿骨骨折後に脂肪滴が血管内に入り肺や脳に達するのは小児医療で用いられる骨髄内輸液同様に骨折後の脂肪滴が容易に流入し易いからである。脂肪吸引では、そのような環境にない。)そう思ったものです。