再建外科では美容外科に縁遠い
私が久留米大学整形外科在籍のまま麻酔科出向中は麻酔科のスーパーバイザーが明日の麻酔の担当医師を決める際、私は形成外科を再三希望したので、麻酔を掛けつつ眼前70cmで展開される同大形成の頭頸部再建外科手術を何度も見させてもらいました。久留米大学形成外科の田井良明教授(当時)は前職は聖マリアナンア医大の形成外科助教授だったので、同大教授でTanzer直伝の小耳症再建で高名だった荻野洋一教授の下に居たためでしょうが、肋軟骨を耳のフレームに合わせるように採取しその採取軟骨を耳の形そのものに仕上げる手術が大変上手く、それを耳の皮下に埋め、後日耳起こしするのですが、かなり綺麗に仕上げるので私はすごく感動していました。
また食道癌の権威の掛川教授(当時)の一外科と形成外科が組んで、遊離空腸を血管柄付きで採取し咽頭にマイクロで吻合させ(顕微鏡下に血管同士を接合)再建する手術も見たりしましたが、この耳鼻咽喉科色の強い久留米大の形成外科は「形成外科」単独の標榜から「形成外科・美容外科」ではなく「形成外科・顎顔面外科」と標榜したのが相応しいものと思いました。
さて、田井教授は医局員への指導が厳しく、言葉使いも他科の教授に比べ1番荒っぽかったので、なんちゃって形成外科医(もしくはスイーツ形成外科医)は叩き出されるか最初から入局しなかったでしょうが、こと美容外科をやる前提で考えると、あの頭頸部再建でアグレッシブな仕事を行う形成外科には美容外科と直結することは少なかったと思います。
なお誤解なきよう書きますが、単に美容外科に直結することは少なかっただけで、頭頸部再建のレベルは高水準だったと思いますし、あの医局出身で今は美容外科をメインでされている先生も医局員時代の事が間接的には幾らでもバックボーンとなっていると思います。